
日本の携帯電話産業はガラパゴスといわれてきたが、それは日本が進んでいたということだ。カメラ付き携帯電話にしても携帯電話の音楽配信にしても日本が生み出したビジネスモデルに欧米の一部の国が追いついてきたという状況にある。今後も日本の先進性を保っていく必要がある。 携帯電話関連市場はコンテンツなども含めると10兆円を突破したという数字がある。モバイルが成長を続けることは日本経済全体の成長にとっても重要だ。 今後のモバイル産業の変化を見通すキーワードとして「アンビエント社会」という言葉を提示したい。これまでは「ユビキタス」を掲げ、いつでもどこでも情報にアクセスできる状態を目指してきた。これは利用者が自らネットワークに接続して情報を取りにいく「プル型」で、コンピューターに人間が振り回されてきた側面がある。 一方、アンビエント社会では意識しなくても情報が自動的に届く「プッシュ型」になる。気づかないうちに安全安心かつ快適な情報サービスを受けられる。情報に振り回されるのではなく、情報を最大限利用できるようになる。 個人に応じた情報が求められるため、プライバシーの問題に配慮し、安全性と使いやすさを両立させる必要がある。 KDDIはそのようなアンビエント社会の実現に向けて、高速通信技術やソフトウエアの開発に積極的に取り組んでいる。 通信会社による垂直統合型かオープンかという、業界の事業構造を巡る議論がある。これからは、両方がバランスを保ちながら進展していく社会になるだろう。

辻村氏 インターネットのモバイル化が進む。携帯電話はパソコンと比べて「(個人との結びつきが強いという)本人性」や「(常に持ち歩く)常時性」などの特徴がある。ネットがこれまで以上に人間社会に溶け込んでいくことになる。 当社は2010年から2011年には携帯電話で光回線並みの高速通信が可能な「LTE」を商用化したい。次世代PHSなども加わり高速大容量化が進めば、サーバー側にデータを置いて必要なときに引き出せるようになる。データを蓄える必要がなくなった端末は使い勝手や位置情報機能などに特化でき、新しい進化が起きるだろう。
喜久川氏 当社は来春に次世代PHSを始める。真の意味でのブロードバンド・ワイヤレス・アクセスを目指していきたい。PHSは一つのアンテナでカバーするエリアが狭いマイクロセルを使っている。アンテナの数は日本全体で16万。この数を生かしたサービスを今後、展開していく。
ピュレッガー氏 当社は個人にルーターを売り、家に置いてもらうという新しい形式で無線LANのネットワークを構築している。この2年間で世界に43万カ所の接続ポイントを作った。 既存の通信事業者とも敵対するのではなく、協力関係にある。フォンのネットワークを使えば、巨額の投資をせずに屋外で家のブロードバンドと同じ環境を提供できる。今後はシームレスに使えるネットワークが必要になるが、無線LANは重要な役割を担うだろう。
テン氏 中国では今後、3年で大きな変化が予想される。携帯電話利用者の数が2012年に10億人に達する。普及率は8割となる。そして2010年には3G携帯電話の利用者が全体の15%を占めるだろう。 当社は特にLTEに関し、上海に2000人体制の研究所を構え重点的に開発を進めている。日本のパートナーとも連携を強めたい。
辻村氏 戦後、日本の製造業は海外で成功したが、通信を含むサービス分野では必ずしもうまくいっていない。日本全体の大きな課題だ。殻を破るためには言語の問題も含めて人材育成が不可欠。ドコモを例に取れば30%程度はインターナショナルな人材という状況が求められる。
テン氏 日本の技術やサービスの水準は高く、海外にも提供されているが十分ではない。海外の地元文化にもっと適応すればより大きな成功を収められるだろう。日本の展示会をみるとすばらしい技術があるのに、世界に十分発信されていない側面もある。
伊藤氏 ネットの世界はグーグルやアマゾンが新しいサービスを生み出してきた。「β版」として完成前にサービスを始める点が特徴で、始めてから改善すればよいという考え方だ。日本は最初から完全なものを作るという意識がある。だがモバイルソフトの世界で勝つためには場合によってはβ版を受け入れていく必要がある。
喜久川氏 当社は基地局にカメラを付けることを検討している。個人情報の問題や犯罪の懸念などだけで良いサービスがつぶされるのは望ましくない。社会的なコンセンサスを得るための仕組みづくりが求められる。
辻村氏 モバイルインターネットの陰の部分としてプライバシーの問題が出てくるのはやむを得ないが、解決方法はある。個人が許可すれば自分の情報を出すという形も可能だ。また、必ずしも個人を特定しなくても年齢層と性別、居場所がわかればマーケティングなどに使える。
ピュレッガー氏 フォンは個人の協力でネットワークを作り上げてきた。個人の位置情報がプライバシーに抵触するというような議論を聞くと、先読みしすぎているように感じる。利用者はそれほど気にしていない。事前にハードルを想定しすぎると革新を限定する恐れもある。




