セッション採録

特別セッション
「次世代ネット時代の政策イノベーション」

藤沢氏 各国のICTの現状はどうなっているのか。

スターク氏 米国のICT政策では3G携帯電話とデジタルテレビ向けに実施した電波オークションが大きな成功を収めた。希少な電波資源を新たな無線通信技術に開放し、300億ドル以上の財政貢献につながった。 オークションで得た収入のうち、15億ドルを使ってデジタルテレビへの移行を支援するクーポンを消費者に発行した。これまでに1500万世帯以上がクーポンを利用しており、2009年2月17日のアナログ放送停波が確実に実現できると信じている。

フォラクス氏 インターネットは開放的で消費者の信頼を得るものでなければならない。コンテンツ(情報の内容)の多様性などを含め、ネットの発展の一端を担うのは当局だと思う。 欧州では競争こそが次世代ネットワーク(NGN)の展開をけん引すると考えており、既存の独占的な通信事業者が特権を得ることに反対している。日本でもNGNの普及を成功に導くには通信の自由化が必要で、NTT東西地域会社の統合といった時代の流れに逆行するようなことは起きてはならない。

金氏 ユビキタス社会には負の側面が必ずある。韓国でもサイバー犯罪やプライバシーの侵害などに対する不信感が高まっているのは事実だ。韓国政府はネットの安全性を強化し、ネットビジネスに対する信頼を高めるよう努めている。個人情報保護のための予算を増やしたり、データ保護技術の開発に取り組む企業を助成したりすることで、健全なネット文化の確立を目指している。

小笠原 日本では2010年までに国民の80%がICTに安心感を得られる社会の実現を目指している。言い換えれば、今でも国民の多くはICTに不安を感じているということだ。日本はインフラの面では世界最先端だが、安心・安全の実現では課題が残っている。

藤沢氏 米国でのアナログ放送停波の課題は。

スターク氏 全米に先駆けてアナログ放送を停波したノースカロライナ州ウィルミントンでの移行は円滑だった。そこで学んだ一番の教訓は消費者への周知徹底だ。放送局やCATV会社は今後、数億ドルを使って消費者が確実に情報を得られるようにする方針だ。

藤沢氏 通信分野でもデジタル時代に即した規制の見直しが進んでいる。

フォラクス氏 イノベーションは一般に新しいプレーヤーから生まれてくるものだ。独占に戻って価格を操作したり新規参入を阻害したりすると、短期的には普及率などで良い数字が期待できるかもしれないが、新サービスの導入には役に立たない。

藤沢氏 プライバシー保護のあるべき姿は。

金氏 韓国ではネットで個人認証する場合、従来はIDを使っていた。ただ、個人のプライバシーを守れない問題が起きてきたため、昨年からは「PIN」と呼ぶ暗証番号を推奨するよう政府の政策を転換した。ネットを使うときにはIDは必要なくなっている。

スターク氏 米国では大学生が就職活動をする時に会社側がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の経歴を見て選考に利用するケースも出ている。世代間によってネット利用に関する意識の違いが大きく、プライバシーに対する考え方は変わりつつある。

エリック・スターク氏

 クリストフ・フォラクス氏

 キム・キコン氏

小笠原 倫明

藤沢 久美氏

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